弥生のタイムカプセル
下之郷遺跡では、土器や石器に加え、多数の木製品などが出土しています。これらの出土品は、かつてのムラの営みの中で実際に使用されたものであり、弥生時代に生きた人々の生活の様子を物語る、とても貴重な資料です。
発掘された井戸と土器
出土した土器
発掘調査では、必ずといっていいほど土器が出土します。それはかつての暮らしに土器が不可欠だったことを示しています。これらを観察することにより、遺跡の時代や当時の生活を思い起こすことができるのです。
下之郷遺跡から出土した土器は、多種多様にわたります。これらの検討の結果、この環濠集落が弥生時代中期、今から約2,200年前のものと判明したのです。また、東海地方をはじめとした他地域の土器も出土しており、この時代にはすでに広範囲な交流があったことがうかがえます。
編み籠(あみかご)と籠目土器(かごめどき)
下之郷遺跡では、植物で編まれた籠や籠目土器が出土しています。これらを観察すると、当時の”編み方”を見ることができます。出土したものからは、網代(あじろ)編み、ザル編み、六つ目(むつめ)編み、木目(きめ)編みの4種類を確認できました。
籠目土器は、井戸の底から出土し、弥生時代中期の細頸壺(さいけいつぼ)にツルをタスキ状に交差させて編んであります。
木製品のさまざま
下之郷遺跡では、土器や石器の他に、多数の木製品が環濠から出土しています。
出土した木製品をみてみると、日常生活に使用する容器などをはじめ、農具や武器・武具など、用途に合わせて幅広い加工がなされていたことがわかります。
また、使用されていた樹木を観察すると、製品によって樹種の使い分けがなされていました。当時の人々はすでに優れた知識を持って道具の加工を行っていたことがわかります。
ココヤシ容器
ココヤシ容器は、幅10.3センチメートル以上、高さ10センチメートルの大きさで、直径4センチメートルの円い穴が開けられます。この容器は、ヤシの子房痕(しぼうこん)を目に、中央に開けた穴を口に見立て、”口を開けた人の顔”を表現しているように見えます。容器にはわずかに赤色顔料が残っており、水銀朱で装飾されていたと考えられます。また、”補修痕(ほしゅうこん)”が見られることから、修理しながら大切に使用されていたことが分かります。
農具
弥生時代は、稲作が本格化した時代でもあります。下之郷遺跡でも、多数の農具が出土しており、ムラでの盛んな稲作の様子を示しています。
土を掘り起こす鋤(すき)や田畑を耕す鍬(くわ)、脱穀に使用する竪杵(たてぎね)など、多様な農耕具が出土し、用途に合わせて様々な形に加工していたことがわかります。
多くの未製品
木製品の中には、作りかけの未製品も多数出土しています。ムラで使用する木製品を自ら製作している様が想い起されます。